オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ツール・ド・フランスを走ることになった白石誓(しらいしちかう)は、対戦相手でありかつての英雄、ドミトリー・メネンコからチーム内のある人物に注意を向けるよう依頼される。そしてレースは始まる。
「サクリファイス」に始まる近藤史恵のロードレースを扱ったシリーズの第5弾である。感覚が2,3年ずつ開いてしまうので前作をよく覚えていないのだが、現在白石誓(しらいしちかう)はフランスを拠点としてプロのサイクルロードレーサーとして生活している。
このシリーズを読んでいる人には言うまでもないが、白石誓(しらいしちかう)は優勝を狙うようなレーサーではない。むしろ同じチームのエースを優勝させるために、風除けや囮となるアシスタントとして働くレーサーである。そんな設定が、ロードレースの特殊性と、他のスポーツにはない深みを感じさせれてくれる。
本書でも、すでに30を過ぎてキャリアの終わりが見え始めたレーサー達の葛藤が面白い。かつての英雄や、期待されながらも思ったような成績を収めることのできないエースなどである。本書では特に、かつての英雄でドーピングによってロードレース界から姿を消したドミトリー・メネンコの復活劇に焦点をあてている。彼は本当に以前のように戦えるのか、彼を取り巻く不安の影の正体はなんなのか。
そんな様々な要素や人間関係を織り交ぜて、23日間のツール・ド・フランスを描いている。ロードレーサーという、自分が選ばなかった生き方を少し体感できた気がする。
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