オススメ度 ★★★★☆ 4/5
15年前に自殺した女性高校教師は、実は他殺だったというタレコミがあった。その死は高校生3人によって行われた「ルパン作戦」と呼ばれる行動に関係があるという。時効を目前に警察はその3人を呼び出し当時のことを語らせる。そうして少しずつ当時の出来事が明らかになっていく。
12年ぶりの2回目の読了である。すでに内容を忘れていたが、とても素敵な物語だったことを覚えていて、今回再度読みたくなった。
15年前に起こった事件の解明を機に呼び出されたのは当時高校生の橘、喜多(きた)、竜見(たつみ)である毎日のようにつるんでいたにもかかわらず、今はそれぞれがまったく異なる人生を送っているのが感慨深い。特に当時冷静な男であった橘(たちばな)が現在はホームレスとして生活をしている点が人生の不思議さを感じさせる。そして、3人の取り調べが進む中、徐々にルパン作戦の全貌が明らかになっていくのである。
もっとも印象に残ったのは同級生の死を、当時の供述をするなかで喜多(きた)が思い出すシーンである。
どれほどつらい記憶でも時と忘れたり、乗り越えたりして、その記憶は風化し、それぞれが新しい人生を歩んでいくのだろう。
事件が3億円事件の時効直前、1975年を舞台にしているのも面白い。アポロ11号の月面着陸など、当時の高校生たちがどのように何を考えて生きていたかが伝わって来る。これはまさに著者横山秀夫が見てきた人生なんだと知り、もう一度その時代に起こった大きな出来事に目を向けてみたくなった。
12年前に読んだときとはまた異なる部分が印象に残るのが面白い。2回目に読んだ今回も良い作品を読んだときのみ感じられる読後の爽快感に溢れていた。あまり知られていない作品ではあるがぜひ多くの人に読んでもらいたいと思った。
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