「誰のためのデザイン?認知科学者のためのデザイン原論」D.A.ノーマン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの名著。世の中のデザインのあるべき姿について認知科学者である著者が語る。
初版の発行は1988年ということですでに30年近く前の本である。それでもデザインの名著としてなんども改変を繰り返し今でもしばしば触れられる書籍なので、デザインに関わる仕事をしている僕としてはいつか読まなければならない本として常に頭の中に存在していおり、今回ようやくその重い腰をあげるに至った。
さて、本書が伝えようとしていることは端的に言うと、「人が道具の使い方を間違ったり、わからなかったりするとき、その人を責めるのではなく、その道具のデザインが適切であるかを考えてみるべきである。」ということだろう。周囲の人を見ればそんな状況に気がつくことはたくさんなるだろう。例えば僕の母はまさに道具を使いこなすのが苦手な人であるが、母1人とっても、ビデオの録画の仕方、コンビニのおにぎりの海苔の巻き方、インターネットのつなぎ方、などデザインの課題がたくさん思い浮かぶ。
本書が出てすでに30年も経過しているにもかかわらず、世の中には今でもたくさんの人が、道具を使いこなせない時に、それを自らの落ち度とみなす人が多いのが残念である。もしそのように、道具を使いこなせない時、自分を責めて終わるのではなく、デザインの改善策を考える文化が根付いていたら、世の中はもっとよくなるのに、と思うのだ。
それでも、著者が30年前に考えたことのいくつかが、現在、スマートフォンなどの形で実現していることが嬉しい。世界は悲しいほどゆっくりだが、それでも確実に進歩しているのである。
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