「十字軍物語3」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第三次十字軍から第七次十字軍を描く。
十字軍物語の第3作目であるが、1作目、2作目で第一次十字軍、第二次十字軍を扱っていたのに対して、本書では第三次から第七次までの5つの十字軍を描く。お互いを認め合うサラディンとイギリスのリチャードの第三次十字軍の章以外では十字軍はむしろ政治的な要素が強かったり、惨憺たる結果に終わったりする。
印象的なのは惨憺たる結果に終わりながらも神に尽くした聖人とされたフランス王ルイである。自らの利益を考えずに神に尽くそうとし、それゆえに十字軍に参加した人々に大きな傷跡を残した彼の行動は、当時の世の中の人の考え方の現代との違いを示しているようだ。神には逆らってはならない。神に尽くせば救われる。今よりもずっとそう信じられていたのだろう。また、いずれの十字軍でも大きな戦力となった騎士団の動向も面白い。聖ヨハネ騎士団は十字軍の後ロードス島へ本拠地を移し、一方で聖堂(テンプル)騎士団は弾圧の末に消滅するのである。
ヤッファやアッコンなど拠点となった町にいつか行ってみたくなった。
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