オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ベネズエラの荒れ果てた地でレアアースが見つかった。その採掘権で儲けようとするエリゾンド家。一方で、丹波春明(たんばはるあき)と鍛冶司郎(かじしろう)は二千万ドルを求めて危険な旅を続ける。
コロンビア、ベネズエラという麻薬や過激派などがはびこる、政府の支配の及ばない国を舞台にした物語。南米という社会としてはいまだ発展途上の地域の文化や人についての理解には役立つだろう。物語中で触れられている出来事のいくつかは実話に基づくものなのだろう。そのいくつかはとても印象的にも関わらず、聞いたこともないことなので、そのような記述に出会うたびに南米が僕らに日本人にとって地理的にも心理的にも遠い場所なのだと思い知らされる。
残念ながら主要な登場人物はみんな人の死をなんとも思わないような行動を繰り返すので、その行動やふるまいにいい刺激を受ける部分はない。著者船戸与一はどうしてもイランイラク戦争を扱った「砂のクロニクル」の印象が強く、あの世界観に再び触れたくて読み続けている気がする。その点で本作品は期待に応えてくれたとは言えない。もし南米の物語をもっと読みたいという人がいたのなら垣根涼介の「ワイルド・ソウル」をお勧めするだろう。
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