オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
20世紀初頭のスペイン、バルセロナ。David Martínは作家になるための道を歩んでいく。そんなある日、宗教を作って欲しいという依頼を受ける。
前半はMartínの作家になっていくなかで、友人であり保護者であるPedro、Martínが想いを寄せるCristina、Martínに憧れて作家を目指すIsabellaなど、読み進めていくうちにMartínの周囲にある温かい人間関係が見えてくる。そんななかMartínは宗教を創って欲しいという依頼を破格の値段で受けるとともに、周囲に不思議な出来事が起きるようになるのである。そして時期を同じくしてMartínが住んでいる古い家の部屋の中で、前の住人の持ち物にその依頼人の名前を発見するのである。
依頼人の目的は何なのか。この家には誰が住んでいたのか、そして彼には一体何が起こったのか。そんな彼の行動はさらに多くの困難を招く事にになるのである。
何よりも物語全体がつくりあげるバルセロナの当時の雰囲気がすばらしい。また、同著者の別の作品「Shadow of the Wind」にも登場した「忘れられた本の墓場」も登場し、Martínの友人として本屋の店主とその息子が描かれており、本という物の存在に対する著者の愛情がひしひしと伝わってくる。
しかし、残念ながら多くの謎を残したまま本書は終了し、今後続くであろう続編にその解決を委ねる事となっている。本書だけですべてを評価する事はできないが、ややミステリアスで超自然的な内容を含んでいるため「Shadow of the Wind」のような心地よい読後感や雰囲気を味わおうとしていると裏切られるだろう。
とはいえ次回作は読まなければならないだろう。