オススメ度 ★★★★☆ 4/5
テレビ局に勤める雪島忠信(ゆきしまただのぶ)は父親からの影響で戦時中の特攻についての番組を思い立つ。そこに、特攻を直前で辞めて生き延びた人がいるという不確かな情報を得る。生の声を聞くためにその人間を探そうとする。
本書のなかでも語られているが、戦争を経験した人の多くが他界し、戦争の生の声を聞けるのもあと数年なのだろう。きっとその後は戦争に対する関心も一気に薄れていくのだ。本書はそんな戦争における、日本のとった特攻という悲劇の作戦について読者に示してくれる一冊である。
忠信(ただのぶ)は戦争を体験している父親から一度戦時中の父親の体験を聞かされた事があり、それゆえに特攻という出来事へ執着する。そして、そんな忠信(ただのぶ)が得た特攻の生存者の情報。忠信(ただのぶ)はその情報の真偽を確かめるため奔走するのである。
一方で忠信(ただのぶ)の父親和広(かずひろ)の戦時中の体験も描かれる。そのつらい体験と、病気療養中に海軍病院で出会いその後特攻で亡くなった上官峰岸(みねぎし)の話。
そんな忠信(ただのぶ)とその父親のつながりをもって、戦争を遠い昔の出来事ではなく、世代を超えて現代に繋がる悲劇として巧みに伝えてくれる。
2,3年前に同じく特攻を描いて話題になった「永遠の0」といくつか共通する部分があるが、本作もまた鈴木光司らしく緻密に考え抜かれた深く感動的な作品に仕上がっている。
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