「風が強く吹いている」三浦しをん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
天才ランナー走(かける)と出会った清瀬(きよせ)は走(かける)を、古い寮に誘い込む。そこでは同じ大学の生徒たち10人が、清瀬(きよせ)を中心に生活していた。やがて10人は駅伝で箱根を目指すことになる。
いろいろあって箱根駅伝を目指す事になったほぼ駅伝素人の10人が箱根駅伝を目指す事が現実的かどうかという意見はあるだろうが、そういった細かい部分を気にしすぎなければ、爽やかな青春小説として楽しむことができるだろう。
10人はいずれも個性豊かだが、なかでも走(かける)と清瀬(きよせ)は存在感でも郡を抜いている。どちらも走ることは好きでも、所属した部の監督やその指導方法、仲間にめぐまれずに仲間と一緒に走る場所を失っていた。そんな2人がやがて信頼し合い一つの目的にむかっていくのである。青春小説としてはありがちな展開なのかもしれないが、それでもそれぞれが積み重ねた努力の成果を本番に向けるそれぞれの姿はなにか心をかき立てるものがある。

いまは走ろう。好きだから。楽しくて苦しかったこの1年に、出会ったすべてのひとのために。心からの応援も、心ない中傷も、すべて受け止めて弾き返せるほど強く。

最期は1秒を争う展開に。信頼と努力の成果が一つの結果へとつながっていく。

止めることはできない。走るなと言うことはできない。走りたいと願い、走ると決意した魂を、とどめられるものなどだれもいない。

読んだ人までも走りたくさせる一冊。
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