オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第24回山本周五郎賞受賞作品。高校一年生の斉藤くんは年上の主婦と関係を持つ。そんな斉藤くんの母親は助産院を営む。斉藤くんとその周囲の人々のその人生を描く。
とりたてて個性のない5人の視点から物語は語られる。姑から人工授精を迫られる主婦。かわいいけど身長の小ささに悩む女子高生など、いずれも日常のどこにでも存在しそうで、ドラマになったり人々の記憶に残るような印象的な物語ではないが、それでも当人にとってはそんななかに楽しみがあり、毎日の悩みがあり試練があるのだ。
そして、そんな各々の視点で語られる物語の、最期を締めくくるのは助産院を営む斉藤くんの母親の視点である。命が生まれる瞬間に立ち会う職業ゆえに人とは少し違った少し深みのある視点を持っている。
自然、自然、自然。ここにやってくる産婦さんたちが口にする、自然という言葉を聞くたびに、私はたくさんの言葉を空気とともにのみこむ。乱暴に言うなら、自然に生む覚悟をするということは、自然淘汰されてしまう命の存在をも認めることだ。
それでも生きていかなければならない、劇的になにか改善するわけではないけれど、少しずつ人生は進んでいくのだ。そんな風にちょっと前向きにさせてくれる空気がある。
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