「「みんなの意見」は案外正しい」ジェームズ・スロウィッキー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人は集団だと愚かな行動をし、実際には数人の賢い人間たちに導かれていると考えている人は多いが、本書が訴えるのはそれとは正反対のこと。序盤はいくつか身近な例をあげてそれを示している。
例えば、検索エンジンに革命をもたらしたGoogleのページランク(ペイジランクが正しいらしいが)がある。ページランクは、それぞれまったく関係のない個人が、自らの価値のあると思ったサイトにリンクを張り、そのリンクがされた数によってそのページの価値をはかるというものである。一人一人は特別インターネットに詳しい人というわけでも最新の情報に常に触れているような知識人でもないだろう。それでもそんなシステムによって検索結果を表示するGoogleの検索エンジンが、当時シェアをにぎっていたYahooを超えたのである。
また、行方不明になった船の行方を、わかっている前後の事実という情報だけを与えてある程度の数の人に予想させ、その結果を平均したところ、そこから数百メートると離れていない場所でその沈没した船が見つかった、などの例も挙げている。本書はそんな、集団の意見は個人の意見より正しい、という主張をベースに展開するが、その過程で強調している。もちろん決してすべての事例についてあてはまるものではないというは理解しなければならない。
後半にかけては、集団の意見が正しいにも関わらず、その集団の意見を拾い上げることの難しさを語っている。そこで挙がる悪い例には、世の中の多くの状況があてはまるように見える。重要なのは、それぞれの個人の意見が影響し合わないような状態にしなければならないということだ。例えば、集団の平均的な意見が正解にもっとも近いだろうという予想で、同じ部屋に集まってそれぞれの意見の平均を取ろうとしても、それぞれの立場に寄って、相互の意見は影響し合い、やがてその全体の意見は、上司や専門家の意見に偏る事になってしまうのだ。
集団の傾向を示す手段として、最後通牒ゲームなどが触れられている点が、先日読んだゲーム理論と繋がってきて個人的には面白い。語り口が淡々としているためにやや読むのに根気がいるが、集団をどのように機能させるべきか、という点では非常に興味深い内容である。会社の会議などをうまく運びたい考える人には参考になるのではないだろうか。

マンハッタンプロジェクト
第二次世界大戦中、枢軸国の原爆開発に焦ったアメリカ、イギリス、カナダが原子爆弾開発・製造のために、科学者、技術者を総動員した計画である。計画は成功し、原子爆弾が製造され、1945年7月16日世界で初めて原爆実験を実施した。さらに、広島に同年8月6日・長崎に8月9日に投下、合計数十万人が犠牲になり、また戦争後の冷戦構造を生み出すきっかけともなった。(Wikipedia「マンハッタン計画」

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