「凍土の密約」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロシアに精通した公安捜査官倉島(くらしま)の物語の第3弾。都内で発生した殺人事件の捜査に加わるように倉島(くらしま)は理由も告げられずに指示される。
「曙光の街」「白夜街道」に続く第3弾である。前2作品は元KGB諜報員ヴィクトルと倉島(くらしま)の双方に焦点をあてた物語だったが、本作品では残念ながらヴィクトルは名前として出てくるだけで姿を現さない。そのためシリーズのなかではかなり地味な展開になっている。
さて、都内で発生した殺人事件で、明らかにプロの仕業と思われる遺体を目の当たりにし、倉島(くらしま)はそのロシア絡みの情報網から一人のロシア人、アンドレイ・シロコフという名前にたどり着く。いったいその男は何を企んでいるのか、なんのために被害者たちを殺したのか。その真相を突き止めるため、倉島(くらしま)はロシア人やその関係者たちから情報を得ようとする。しかしそれは、一歩間違えればこちらの動きを相手に教えて、自らも命を狙われかねない行動。常に危険な駆け引きの連続である。ある人間について調べるためにその人間の名前をネットで検索するだけで、追跡者として特定され命の危険にさらされる。そんな様子はなんでもかんでもまずインターネットで調べようとする人にとっては衝撃かもしれない。
さて、真実が明らかになるにつれてそれは第二次世界大戦中の出来事へとつながっていく。公安捜査官の活動は近年いろいろな刑事ドラマに取り上げられるせいか、一般の人にもある程度知られるようになっては来ているが、それでも平和な日本を満喫している僕らにはとても現実感わかない世界である。本作品はスピード感や読者を一気に引き込む力があるわけではないが、そんな公安捜査官たちが、僕らの視界に入る前のところで平和を守ろうと奔走する姿が伝わってくる。
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