「チヨ子」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
幻覚や幽霊のような不可思議な出来事に絡めた5編の物語を収録した短編集。
短編集ということで、それぞれの物語は短く、とてもお腹いっぱいになる、というようなものではないが、ところどころに宮部みゆきらしさのようなものが感じられる。どこにでもありそうな物語のなかに不思議な出来事を盛り込んでいるため、宮部みゆきが超能力者を扱っていたような、そんな不思議な期待感を感じさせる。

何かを大切にした思い出。
何かを大好きになった思い出。
人は、それに守られて生きるのだ。それがなければ、悲しいぐらい簡単に、悪いものにくっつかれてしまうのだ。

個人的には4つめの物語「いしまくら」が好きだ。父と娘で、公園で殺された女性について調べる物語。その事件を発端として広まった、幽霊が出るといううわさ話。それは世の中の人々の不安と出来事を端的に説明しているようにも感じられる。
なにかの出来事に対して、誰かが行う動機付け。原因と状況をみて、「きっと彼女はこう感じたんだろう」。宮部みゆきの行う動機付けは僕らが思う、さらに一歩上をいく。
わずかであるが久しぶりにそんな空気に触れさせてもらった。しかし、やはり宮部みゆきにはこの世界観で長編を書いてほしい。
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