オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Lincoln RhymeとAmelia Sachsは中国からアメリカへの密入国を大規模に行う男、通称「Ghost」追跡の任務に就くこととなる。一方、Ghostはアメリカに到着直前に、多くの中国人を乗せたままの船を爆発させ沈没させ、自らは逃亡する。
RhymeとAmeliaの「Bone Collector」に続く物語の第4作目に当たる。現場に残されたわずかな証拠から、犯人に迫るシリーズではすでにおなじみとなっている捜査手法はもちろん大きな魅力の一つだが、本作品ではさらにいくつかの要素が加わって魅力的な作品になっている。
まずは、自ら密入国船に密入国を目論む男として潜入し、最終的にGhostに法の裁きを受けさせようとする中国人刑事、Sonny Liの存在だろう。互いに協力してGhostを捕まえようとする過程で、RhymeとLiは少しずつその実力を認めるようになり、やがて、RhymeはそのLiの人と常にまっすぐ向き合おうとする姿勢から、ほかの人にはいだかなかった親密さを感じるようになる。その2人の会話のなかからは、中国とアメリカという2つの国の文化や裕福さの違いが伝わってくるだろう。
そしてもうひとつの面白さは、中国で反体制派としての活動に従事し、アメリカへ亡命をしようとするなかで密入国船に乗り込んだSam Changとその家族の存在である。なんの基盤もない新しい国で、自らが持っている技術だけを元手に家族を養っていこうとするChang。彼が見せる葛藤や、自らの家族の命を脅かそうとするGhostに対する計画など、どれも非常にスリリングである。
そしてラストは悲しくもあり、うれしくもあり、そして予想をさらに超えてくれるだろう。まだ本シリーズは3作目だが、個人的にもっとも好きな作品である。一読の価値ありの一冊。