オススメ度 ★★★★☆ 4/5
電車内で喫煙している男たちに絡まれた教師、耀子(ようこ)を救ったのは同じ高校のボクシング部の生徒だった。それが耀子(ようこ)のボクシングとの出会いだった。
物語は20代半ばの女性教師耀子(ようこ)と、天才と呼ばれるボクサーであり高校の期待の星である鏑矢(かぶらや)、そしてその幼馴染でいじめられっこでありながらもボクシング部への入部を考える勇紀(ゆうき)を中心に進む。
マイナースポーツでありながらも、通常のスポーツと同一視できないボクシングという競技の特殊性を語りながら、さまざまな動機をもって集まってきたボクシング部の生徒たちの青春を描いている。
生まれながらの天才鏑矢(かぶらや)、そして努力の天才であることが次第に明らかになる勇紀(ゆうき)。そんな親友でありながらも対照的な2人を中心にすえている点が物語を面白くさせている。そして2人の前に立ちはだかるライバル校の無敗のモンスター稲村(いなむら)。複雑なことを考えずに一揆読みできる作品である。
「武士道シックスティーン」や「ひかりの剣」など最近スポーツものに涙腺が甘いようだ。常に思いっきり打ち込める何かを探し続けている僕にとっては、本作品で歩けなくなるほど力を出し尽くす登場人物たちがなんともうらやましい。
そもそもこの本を手にとったのは、その物語に惹かれたからではなく「永遠の0」で魅力的な作品を書いた著者百田尚樹がほかにはどんな作品を書いているのだろう、という思いからである。太平洋戦争を描いた「永遠の0」とはジャンルが違いすぎて比較にならないかもしれないが、ボクシングという一歩間違えれば命さえも奪いかねないスポーツに対して、物語を通じて、多くの見方を提供するあたりに共通点が見え隠れする。
とりあえずしばらく百田尚樹作品は見逃さないようにしたい。
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