オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
コンビニ強盗を試みて逃亡の身となった伊藤(いとう)は小さな島に辿り着いた。そこは少し変わった人々と言葉を喋るカカシがいた。帰ろうとしても逃亡生活が待っている伊藤(いとう)はしばらくこの島で生活することにした。
序盤から伊坂ワールド全快である。どこかで伊坂幸太郎を小説界のシュールレアリストと称していたがまさにその言葉のとおり現実感の薄い物語。前々から伊坂幸太郎の紡ぐ物語と僕の読書に対して求めているものとのギャップは感じていたのだが、先日たまたま手に取った「魔王」が思いのほか良く、再び彼の作品を読んでみようとおもっての本作品だったのだが、ページをめくる手は遅くなるばかり。
物語はその見知らぬ不思議な島で展開していく。1人(?)のカカシの言葉を信じて島から出ようとしない人々の言葉は、時に人々が忘れかけている幸せの形や、しばしばフィルターを通してみている真実を、端的にあらわしている。
個人的に印象的だったのは、生まれながらに足の不自由な人間を見ながら、島のペンキ塗りが言う言葉。
あいつを見るといつも思う。俺はまだマシだって。俺は普通に歩けている。あの男が、奇跡でも起きないかと祈っている願いが、俺にはすでにかなっている。
伊藤(いとう)が島に着てから少しずつ起こる変化。そして島に伝わる言い伝え。
ここには大事なものが、はじめから、消えている。だから誰もがからっぽだ
多くのものが足りないように感じられるにもかかわらず、あえて一つ挙げようとするとその答えがわからない。その答えを島の人々は、島の外から来た伊藤(いとう)に期待する。
印象的な言葉をいくつか得ることができたものの、全体として評価すれば、この長い布石が最終的な結末に対して必要だったのか疑問を感じてしまう。このあたりが感覚の違いなのだろう。また機会があったら別の作品も手にとってみたい。
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