「白夜街道」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警視庁公安部の倉島(くらしま)警部補は、元KGB所属のロシア人ヴィクトルが日本に入国したという情報を得る。
物語は「曙光の街」の5年後という設定である。「曙光の街」のエピソードの中で、ヴィクトルの強さを肌で感じ、平和に見える日本の中でも、裏では命をかけたやりとりがあり、だからこそ公安という仕事の必要性を肌で感じた倉島(くらしま)が、5年を経て成長した姿を本作品で見ることができる。
本作品でも物語の視点は主に、ヴィクトルと倉島(くらしま)で展開していく。前作では、日本を舞台にした闘いや本当の強さにあこがれる男達の人間物語であったが、本作品の半分近くがロシアでの物語りとなっていて、僕ら日本人にはあまりなじみのないロシアの文化や、その周辺国の歴史を中心に進められているため、ロシア、中央アジアの歴史、文化などに興味をかきたてられる作品に仕上がっている。
ヴィクトルと倉島(くらしま)、お互い多くの人間と同じように、自分の良心に背かないように生きていこうとしながらも、その生まれ育った国や文化が異なるために異なる考え方をするその人生の差と、その2人が合間見えて何かを感じ合う展開がこのシリーズの魅力なのだろう。
そしてロシアと日本を比較することで、日本にある安全がかならずしも永遠に続くものではない、言い換えるならいつ終わってもおかしくない貴重なものであることを訴えてくる。

すべての人々は平和で安全な日常の中で暮らす権利がある。だが、その日常は実に危ういバランスの上に成り立っていることを、倉島はすでに知ってしまった。

ただ、前作を読んでない読者にはやや理解しにくいのかもしれない。


バラ革命
2003年にグルジアで起こった、エドゥアルド・シェワルナゼを大統領辞任に追い込んだ暴力を伴わない革命。(Wikipedia「バラ革命」
オレンジ革命
2004年ウクライナ大統領選挙の結果に対しての抗議運動と、それに関する政治運動などの一連の事件の事。(Wikipedia「オレンジ革命」
ペチカ
ロシアで普通のスタイルの暖炉を想定しつつその全般を指す。日本では、特にロシア式暖炉のことをいう。(Wikipedia「ペチカ」

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