オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ダブリンで新種の偽百ドル札が発見された。英国情報部員のスティーブンは、真実の究明のために世界を走り回る。
偽百ドル札の出現によって徐々に明らかになる国家間の情報戦を描いている。各国の情報部員たちの、暗号を交えたやりとりや駆け引き。それはそれで現実に近い様子を描いているのかもしれないが、僕の生活圏とあまりにかけ離れた世界と、過剰とも思えるな視点の切り替えが、話に入るのを難しくさせている。
そんな仲、物語の中で重要な役割を演じる日本人女性、内閣官房副長官の高遠希恵(たかとおきえ)、や篠笛の師範である槙原麻子(まきはらあさこ)の多才かつ知性溢れる振る舞いは数少ない魅力の一つである。
また物語中に多くの芸術品や伝統的文化が描かれていて、知識欲を刺激する点も個人的には評価したいところである。
偽百ドル札によって世界情勢が大きく変化するという設定は非常に面白いし、国家間の駆け引きの大部分が国民の目の届かない範囲で行われているのだろうと考えさせてくれたが、残念ながらその魅力的な材料を読者に巧く伝える技量がこの物語にはなかったという印象を受けた。
正直何度本を閉じようと思ったかわからないが、最後まで読み終えたのは、「一度読み始めた本は最後まで読破する」という僕自身の性格によるものだろう。
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