オススメ度 ★★★★☆ 4/5
外資系ファンドに勤める野村妙子(のむらたえこ)が休暇から戻ると、同じ部署の社員は解雇されていた。不可解な空気を感じながらも、託された地熱発電を業務とする会社の再生へ取り組む。
なによりもまず、企業買収で利益を上げる買収ファンドという業務形態が新鮮である。妙子(たえこ)自身、この業種の魅力として、「企業の地獄から天国までのすべての過程に責任を持つこと」と述べているように、いろんな業種のビジネスモデルを知ることができるという点で非常に魅力的な仕事なのだろう。
そして本作品で妙子(たえこ)が再生を請け負った会社は、地熱発電を主な事業とする会社である。エネルギーを扱うので当然のように日本のエネルギーの大部分をまかなっている原発問題についても触れられていて、その危険性や政治的な問題にまで話は広げられている。
妙子(たえこ)は再生請負人として弱みを見せられない立場にある。それでも、純粋に地熱発電が日本の環境にやさしいエネルギーであって有意義に活用すべきという考えや、研究者たちの努力や熱い思いに答えたいという考え、そして、企業再生のためには情けをかけてはならないという考えの間で葛藤しながら、自分の与えられた責任を果たすために突き進む。彼女の存在はこの物語の大きな魅力である。
物語は妙子(たえこ)の目線だけでなく、地熱発電の第一人者の御室耕冶朗(おむろこうじろう)にもたびたび移る。地熱発電に情熱を燃やすその強い気持ちをつくっている過去や思いもまた読む人の心に残るだろう。
新しい知識と、現実の社会問題、そして詳細な心情描写。面白い物語に必要不可欠な三要素がしっかり詰まっている作品である。
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