オススメ度 ★★★★☆ 4/5
4年ぶり2回目の読了。前作「千里眼 メフィストの逆襲」と2冊で一つの物語となっており、北朝鮮問題を題材とした物語の完結編である。岬美由紀(みさきみゆき)や蒲生誠(がもうまこと)は東京カウンセリングセンターの研修生となった謎の女性、李秀卿(リ・スギョン)を北朝鮮の工作員と疑って身辺警護する。
北朝鮮で生きてきた李秀卿(リ・スギョン)と美由紀(みゆき)は物語中で何度も言い争いをする。信じるものや育った環境によってどんなに理論的な会話を重ねようともお互いに理解することは難しいものだと感じさせるが、それを辛抱強く続けることによってそれは可能になるということもまた教えてくれる。
そして、物語中盤から、正体を現した李秀卿(リ・スギョン)によって、日本と北朝鮮の関係の中で多くの日本人が誤解している一つの真実の形を見せている。
もちろんこの物語は松岡圭祐の作り出したフィクションなのだから、必ずしも真実が描かれているとは限らない、しかし、僕らが「真実」として受け止めていること。つまり、ニュースや新聞から得られる情報によって僕らが持っている北朝鮮に対する印象も、必ずしも真実とは限らないのである。北朝鮮に対する考え方を変えてくれる作品である。
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