オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第4作である。奥多摩の山中で行われていた自己啓発セミナーの参加者4,000人が人質に取られた。「千里眼」で凶悪なテロを画策し、「千里眼 運命の暗示」で死んだとされた友里佐知子(ゆうりさちこ)が企てた陰謀である。
世間で認識されているような、人を思いのまま操る”洗脳”は現実にはあり得ない。という立場に立ちながらも、4,000人ものセミナー参加者が抵抗も見せずに施設の中に人質として留まってしまった状況に、「洗脳」の存在を信じる世間に対して、美由紀(みゆき)や嵯峨敏哉(さがとしや)は心理学的立場から真実を探ろうとする。
世にはびこる凶悪事件について、その犯人を「異常」とか「洗脳された」という一言で片付け、それ以上理解しようとしない現在の世の中にに疑問を投げかけているのがこの物語のテーマと言えるだろう。
どんな凶悪な犯罪者だろうと、そのような行為を働く過程、育った環境にその心を育む土壌があったはず。そんな考え方は普段の人間関係にも当てはめることができる。理解し難い行動に走る人、仲良くなることはできないかもしれないがその気持ちを理解することはできるかもしれない。
物語終盤では友里佐知子(ゆうりさちこ)と岬美由紀(みさきみゆき)が向き合って言い争う場面がある。決して知ることのできな人間の本質、生きる意味。お互いの信念を言葉にしてぶつけ合う、その台詞の数々はどれも心に響く。結局その人生に悲観するか希望を見出すかは本人次第なのである。そこに、間違っているとか正しいとかいうものはない。
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