「鍵」乃南アサ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
森家の3人の子供。長女の秀子(ひでこ)、長男の俊太郎(しゅんたろう)、次女の麻里子(まりこ)は両親を相次いで失ったショックを感じ始め、俊太郎と麻里子の関係もぎくしゃくし始めていた。そんな折、近所では通り魔事件が相次ぐ。
この物語は通り魔事件の犯人を追ったミステリーでもあり、暖かい家族の物語でもある。そんな中で、突然両親を失って悩む俊太郎(しゅんたろう)の心情と、麻里子(まりこ)が生まれつき持った両側感音性難聴というハンデが物語に深みを与えている。麻里子(まりこ)は健常者には意識しないような日常に普通に起きる出来事で麻里子(まりこ)は戦わなければならないのである。そんな麻里子(まりこ)の世間を見つめる視点は新鮮である。

世の中には親切な人ばかりいるわけではないことくらいは、痛いほど分かっている。自分のような女子高生が、突然目の前に現れて話し始めても、きちんと耳を傾けてくれるだろうか、自分のいっていることの意味を理解してもらえるだろうか──。いつだって、そんな不安を抱えて歩いているのだ。

通り魔事件は、3人の家族としての絆を深めるための要素、麻里子がハンデと戦って強くなるための要素として働いていて、残念ながら謎解きの要素などは少なく、また、解決までのくだりにも説得力を欠いた部分があり物足りなさを覚えた。家族の物語として展開するなら、3人の兄弟の一人一人にもっと読者の心を鋭くえぐるような深い心情の描写があればさらに物語の深みが増すだろうと感じた。
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