オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
杉本敦也(すぎもとあつや)は12歳の夏、父親を殺された。以来、何をやっているときも、常に周囲からの奇異の視線を感じてしまう。そして、21歳になった今、多くの経験を経て、12歳の夏に一体何があったのか、なぜ父は友人に殺されたのか、9年前の真実に目を向けようとする。
物語は敦也(あつや)の一人称で綴られるため良くも悪くも敦也(あつや)の物の考え方が多く描かれている。大人になりきれない21歳の敦也(あつや)の心がよく見える。
敦也(あつや)は12歳の夏から「父を殺された少年」だったことで複雑な思いを抱き続けていたのである。
敦也(あつや)の自分勝手な考え方に、身に覚えを感じてしまう。数年前の自分と重ねてしまうからだろうか。
物語は犯罪者と被害者の人権の問題へも触れることとなる。ジャーナリストとして敦也(あつや)と接点を持った武藤(むとう)は敦也にこう語る。
また僕の中に、答えの出ていない問題が出来上がったような気がした。
この物語自体は真保裕一としての新たな試みだったようで、すべてが敦也(あつや)の回想シーンとして描かれているため、話の展開が遅く、特に真実を求め始めるまでが長すぎて間延びする感がある。また、21歳の青年の回想としては感想などがあまりにも大人びているような印象も受けるが、作者の視点から敦也(あつや)の気持ちを描いてしまうためなのだろう。内容としてはページ数のわりに薄い印象を受けた。
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