オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「貧しい家庭に育った和倉勇作、裕福な家庭に育った瓜生晃彦。二人はお互いを意識しながら時には妬み、時には憎み、そして時には憧れてもいた。」キャッチフレーズをつけるならこんなところだろう。1つの殺人事件をめぐって大きな謎が少しづつ解明されていく。最後は「宿命」というタイトルのとおりすっきりと謎が解ける事になる。毎度のことながら東野圭吾の作品は疲れない。「疲れない」というのは、例えば読んでいる最中に前のページを読み返したりしなくても一気に読めるという事だ。この作品も例外ではなかった。
ただ、ひとつ言わせてもらうなら東野圭吾の作品はフィクションなのだ。もちろんこのブログに掲載している本の大部分はフィクションなのだが、ノンフィクションを折り混ぜた作品の方が、自分自身にとってもいろいろな方向に興味が広がることになり結果的に自分の世界を広げる事になる。東野圭吾の本は作者の空想の部分が8割,9割を占める。そのため読んで、そこで完結してしまう。例えば松岡圭祐はいつも現実の世界と関連したストーリーを展開してくれる。例えば9.11のテロや新宿の雑居ビル火災である。宮部みゆきは世の中のおかしな制度や現代にはびこる不思議な人間関係をえぐってくれる。そういうものが東野圭吾にはない。ある意味ラクではあるが、ある意味物足りないのだ。それでものんびりしたいときにはまた東野圭吾の作品を手に取ることだろう。
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