「早めに取り組む」は不幸を招く

UIデザインはエンジニアとの共同作業であり、多くの場合デザイナーがデザインを作り、それをエンジニアが実装するという流れで進む。しかし、常にエンジニアとデザイナーの作業量のバランスが取れているわけではない。

悩ましいのはエンジニアが忙しいが、デザイナーの手が空いている時である。そんなときありがちなのが、

実装は先になってしまうが、先にデザインだけ作っておこう

という展開である。リソースを有効利用しているように聞こえるこの提案は、残念ながら多くの場合、不幸しか招かない

Andrea Piacquadioによる写真: https://www.pexels.com/ja-jp/photo/3807738/

問題は、そのデザインを作るデザイナーもそのほかの関係者も、このデザイン作業を急ぐ必要がないということをわかっているという点である。デザイン作業に限ったことではないが、効率よく作業を完遂するために適度な締め切り設定ほど重要なものはない。締め切りまでの時間が短が過ぎれば成果物の質を落とさざるを得ないのは明らかである。

しかし、逆に締め切りまでの時間が長ければ良いかというとそんなことはない。個人としても組織としても必要以上に修正や試行錯誤を繰り返すこととなるだけである。結果、リソースの無駄遣いだけでなく、デザイナー自身のモチベーション低下にも繋がることさえある。

最悪の場合、せっかく作成したデザインがお蔵入りすることもある。なぜなら実装の目処が経った頃には、デザインしたときとはビジネスやサービスの状況が変わっていて最初から考え直さなければならないこともあるからである。

デザイン作業とは発散と収束を経て完成になる。時間があればいくらでも発散することができるが、その一方で永遠に完璧には辿り着けないのもデザイン作業の特徴である。時間をかければ良いものができる、というのは間違ってはいないが、気をつけなければいけないのは、費やした時間に比例してデザインがよくなるわけではないということだ。

結局、作成したデザインが望んだ効果を生むかは、リリースするまで誰にもわからないのである。時間をかけ過ぎずに適度なタイミングでリリースするべきなのだ。

では、デザイナーの手が空いて、エンジニアが忙しい時、デザイナーは何をすべきか。そんなときこそ、デザインシステムなどのデザイン環境の整備や、社内へのデザイン文化の布教活動に時間を使うべきである。

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